プレーバックシアター

プレーバックシアターという語り手(テラー)のストーリーを聞いて、その場で数人の素人のアクターが打ち合わせもなく即興で再現するものがある。たんなるストーリーの展開ではなくテラーの心情を表現する素人の自然なアクティングによって、テラーや観客、そして、アクターまでもが不思議な共有空間に包まれていく。
自分のストーリーを第3者がアクティングするのを見ながら、客観的に自分自身を振り返ったり見つめ直したりするセラピー的な要素が、テラーはもちろんのことアクターや観客の中にも深い共感として生まれてくる。過去に起きた事実を変えることはできない。傷ついたという過去を否定もできない。だけど、過去を引きづって生きている今の心を癒すことはできると思う。その方法は、今一度、過去の自分を生きてみること。しかも、中途半端にではなく、心と体と魂のすべてにおいて、トータルに自分の過去を「プレイバック」すること。苦しみの心を生み出したのは、確かに過去の体験からであっても、それを今だに抱えているのは『現在』の自分であり、それを解放してあげられるのも『現在』の自分でしかないのだと思う。

自分はプレーバックシアターの魅力に引かれ過去に何度か参加し、Yoga of Lifeでも主催してきた。以下は、その中で行われた「人生の歩き方」というワークで、病弱だった少年期から現在までの自分を10メートル先に置かれた『現在』という目印を目指し体で表現しながら歩いたときの体験だ。

いつも下向きで何かを考えていた子供の頃の自分は、ワークの中でうつ向き加減に歩き始めた。間もなく喘息の発作で息苦しくなり、しゃがみ込み、床を這いずり回り、絶望的な眼で遠くの『現在』を見据えていた。今でもたまに未来の『現在』が暗く見えてしまうのは、この時の体験からきているのかもしれないと、ふっと思った。やがて少年から大人に成長し、力強くなった自分の肉体の存在に気づいたとき、両手で確かめるように自分を抱きしめ、『現在』に向かいゆっくりと最後の一歩を踏み出していた。ほんの数分の過去から現在までのプレイバック、深い体の呼吸と共に聞こえてきた拍手の音がとても大きく聞こえ、みんなボクと一緒にいたんだと思った。

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