ちょこっとヨガ講座 - 自己成長としての気づきと受容

◆気づきたくない症候群

ヨガや瞑想では、よく「気づき」について語られますが、「いろいろと気づくと疲れるし、面倒くさい」と思ったり、「そもそも、いくら気づいても何も変わらない」と、諦め気分になったりするかもしれません。

実は、そういう思いのときこそ、その気づきに対して、もう一度、冷静に自分を振り返るときなのです。心が否定的に判断し始め、本来の純粋な気づきが失われているかもしれないからです。

例えば、自分のことで何かに気づいたとき、
「それってよくないことだ」と判断していたり、
「もっと、自分を変えなくては…」と焦ったり、
「そうは言っても、それは無理だ」とがっかりしたり。

気づくことは悪いことではなくても、このように、自分を否定的に判断し始めると、気づくこと自体に疲れてきたり、面倒くさくなったりという「気づきたくない症候群」が始まってきます。

ヨガや瞑想を始めると、多かれ少なかれ自分自身のことがよく見えてくるのですが、最初にやってくる大きなハードルは、この「気づきたくない症候群」です。イライラしていることに気づいてもそれに気づかないふりをしたり、それ自体を否定していきます。自己否定や自己嫌悪が強ければ強いほど、この傾向は強くなります。

多くの場合、そういう状況で苦しむのは、判断することで起きる自己否定や嫌悪感、そして、不安や焦りなのです。つまり、苦しみの原因は気づきそのものではなく、気づきに対する自分の捉え方にあります。

ではなぜ、苦しみの原因となるのに判断するかというと、そのように反応することが習慣的に染み付いているからで、また、そのような習慣的な反応しか気づきに対する対応を知らないからです。

◆気づきは成長の最初のスタート

気づきは成長への最初の大きなスタートと言いますが、ここで気づきを生かして成長するか、それとも、途中で放棄するかの大きな分かれ道になります。

ヨガによって体と触れる機会を持つことは、気づきが飛躍的に促されます。しかし、その気づきを成長に生かすには、気づきに対して健全な対応をする必要があります。

◆否定から受容への4つのステップ

では、どうしたらいいのでしょうか? まずは、一旦、体をリラックスさせることです。深呼吸をすることです。気づきに心が反応しているときは、ほとんどの場合、体も緊張しているからです。体を動かし緊張を緩めるヨガのポーズや呼吸法が役立つのはこのタイミングです。一瞬でもいいから体の姿勢を変えたり、深呼吸をするといいでしょう。

2番目に行うことは、判断している心のスイッチをオフにすることです。最初は難しく感じるでしょうが、このときこそ、普段のヨガや瞑想をリハーサルとして練習するのです。ポーズができているかできていないか以上に大切な練習となるはずです。

判断する心のスイッチがオフになれば、一瞬でもそこに静けさや安らぎが体験されるはずです。それは心だけでなく、身体感覚の変化としても現れるはずです。体の緊張や強張りがわずかに緩む感覚があるでしょう。そうしたら、非常に大切なことですが、3番目として、この一瞬の感覚をたっぷりと味わってください。

そして、4番目に、この一瞬の静けさや安らぎの中で、それまでに起きていた気づきと、それに伴った嫌悪感、そして不安や焦りなどの感情や思いを、やさしく受け入れるのです。もし、この受け入れるという感覚を、一瞬でも実感できたなら、そして、そのプロセスに意識的でいられたなら、それは大きな成長です。なぜなら、気づきに対し習慣的に反応し苦しんでいる状態から、「そのままを受け入れる体験」となっているからです。否定から肯定へと180度転換している瞬間だからです。

気づきそのものは、何も否定されるものではありません。現実に起きていることを、ただ、そのまま認識しているだけのことです。その気づきを生かすかどうかは、「そのままを受け入れる体験」があるかどうかにかかってきます。

◆受容から成長へ向けた選択肢

気づきが起きても受け入れる体験、つまり受容がなければ成長は期待できません。なぜなら、成長とは、未来へ向けた次への選択肢が見えてくるから可能なのですが、その選択肢は、気づきを受容するからこそ見えてくるものだからです。

自分自身や自分の体験への気づきを受容することで「それもありかもしれない!」という選択肢が見えてきたとき、私たちはそれまでの古い自分から新しい別の自分へと変化していく可能性が生まれるのです。この変化にこそ成長の証があると言えます。

体を通して気づき、受容し、そこから見えてくる選択肢から自分なりの選択を主体的にしていく。そして、さらに、気づきを深め、いずれ自分の心奥深くの本当の自分に出会う。その本当の自分が望む方向へ一歩踏み出す。これが自己成長のプロセスであり、道標としての地図となっていきます。

三浦敏郎
1981年より神奈川県西部を中心にヨガ指導を始める傍ら、鍼灸院を開設。1991年、クリパルヨガの創始者、アムレット・デサイ師来日の際にスタッフ及び通訳を務めたことが転機となり、公認クリパル教師となる。気づきのプロセスを重視したフェニックス・ライジング・ヨガセラピーの要素を取り入れ、参加者の体験から学びを導き出すメソッドで数々の集中コースをデザインする。クリパルヨガ教師トレーニング・ディレクター。

気づきを促すヨガ「クリパルヨガ」

クリパルヨガは、完成されたポーズを目指すことよりも、内面で実際に起きていることに気づき、受け入れることを大切にしています。
このため、自分への理解を深め、人との関係を改善するなど、セラピー的な要素があり、体だけでなく、心を大切にした暮らしを模索する人に静かな支持を集めています。

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2016-08-26

カテゴリ: ちょこっとヨガ講座

 

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